沖縄に生息するジュゴ ンは現在では十数個体しか確認されておらず、琉球列島からの絶滅が強く危惧されています。それに象徴されるように、沖縄のサンゴ礁生 態系は、世界中の多くのサンゴ礁生態系と歩みを同じくして、ここ数十年の間に急速に衰退し、その保全が急務となっています。そこで、保全し再生を目指すべ き、健全なサンゴ礁生態系とはどのようなものであるかを、スズメダイのなわばりをモデルとして分析しました。多様な微細棲息場所がある複雑な空間には多く の種が共存することができます。クロソラスズメダイの藻園内では糸状藻類ハタケイトグサが芝生状構造を形成しており、その藻体上や、藻体がからめ集めた堆 積物中にはさまざまな有孔虫類が住み込み、底生有孔虫の 種数と個体数はともになわばり内でなわばり外よりも高くなりました。こうして、スズメダイ類によるなわばり行動が、間接的に底生有孔虫類に生息場所を作り 出すこととなり、なわばり内での多種共存を促進していることが示されました。このような、生物が住み場所を作り出し、そこに新たな生物が住み、さらなる住 み場所を作り出していくという過程が、サンゴ礁生態系の基盤となっているのです。こうしてスズメダイのなわばりを巡る研究は、サンゴ礁生態系の住み場所を 巡る成り立ちの一面を明らかにしました。そして、サンゴ礁生態系での保全やその再生に重要なのは、特定の生物種を対象にするのではなく、その場の生態系ご と対象にすることであり、生物が生物に住み場所を作り出すという連鎖を常に意識することであると提言しました。
maesato

石 垣島真栄里のユビエダハマサンゴ大群落
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