食品栄養学科Department of Food Science and Nutrition
医療チームの一員として力を発揮する、食と健康のプロフェッショナルに。
現在食生活考
健康講座1
農学部 食品栄養学科(管理栄養士養成課程)
教 授 村上 哲男
妊娠期・授乳期の栄養環境が人の健康を左右する
高血圧、肥満,高脂血症、糖尿病、大腸がんなどは生活習慣病と一般に信じられていますが、同じような生活をしていても発症するかと言えば必ずしもあてはまらないことがあります。近年,胎生期や乳幼児期などの発達時期の栄養状態の良否がその発症に影響することが明らかになってきました。それは、胎児期、新生児期に児が低栄養状態に暴露されることで、出生後の疾病発症が既に胎内で決定されてしまうというものです(成人病胎児期発症起源説)。妊娠中の胎内環境がヒトの健康に対して生涯を通じて影響を及ぼすということで、21世紀最大の医学仮説として全世界で注目され,現代の生活習慣病を考える上で必要不可欠な概念となっています。
最近の食生活の簡素化、若い女性たちの無理なダイエット、妊娠への厳しい周産期管理など母親の栄養不足を助長する要因はたくさんあります。また,一方では栄養過多の妊婦もいます。厚生労働省「人口動態統計」調査によれば、我が国では正期産で2500g未満の低出生体重児の割合が増加しており、最近は10%に近づいています。この要因として出産女性の高年齢化,完全な周産期管理やダイエット等による母親の栄養状態の悪化が考えられ、将来高率に生活習慣病を発症する可能性が危惧されます。
疫学研究から始まった胎児プログラミング説は生活習慣病の成因と予防の分野において新たな問題を提起し、疫学研究のみならず動物実験や分子レベル等多方面にわたって積極的に研究が行われて、もはや仮説ではなくなりました。
生活習慣病の一次予防の最も初期対策として,妊娠期の良好な栄養状態を通して胎児や乳幼児の栄養改善が重要となってきています。妊娠前に「やせ」であった女性はそうでない女性にくらべ、低出生体重児や早産児を出産するリスクが高いことが指摘されています。そのためにも、若年女性の痩せ願望や不規則な食生活、喫煙などへの対応が必要です。それに加えて、「食物」と「サプリメント」の栄養学的な違いを明確にさせなければなりません。