食品栄養学科Department of Food Science and Nutrition

医療チームの一員として力を発揮する、食と健康のプロフェッショナルに。

現在食生活考

健康講座2

農学部 食品栄養学科(管理栄養士養成課程)

教 授 上嶋 繁
血栓性疾患の発症にかかわる食物成分

 平成17年度の簡易生命表によると日本人女性の平均寿命は85.49歳で世界第1位、日本人男性の平均寿命は78.53歳で世界第4位と、日本は世界有数の長寿国となりました。しかしながら、食生活の欧米化に伴って動物性タンパク質や脂肪の摂取量が高まり、動脈硬化症や血管内に血の塊(かたまり)が生じる血栓性疾患などにより死亡する割合が高くなってきています。 現在日本人の死亡原因の第1位は悪性新生物であり、第2位は心疾患、第3位は脳血管疾患です。しかし、死亡原因となる主要な心疾患は心筋梗塞であり、主要な脳血管疾患は脳梗塞で、ともに血管内に血栓が生じて血流を遮断する血栓性疾患です。この血栓性疾患による死亡者数は悪性新生物による死亡者数とほぼ等しいことから、血栓性疾患の重要性が注目されています。

 血栓は、血液凝固系と血小板系の活性化により形成されますが、血栓が血管内に長く留まると血流を遮断して末梢組織への血液供給は妨げられます。そこで、生体にはこれらの血栓を溶解・分解して血管内から除去する血液線溶系という生理作用が存在します。 

 血小板の凝集能を抑制する食物や食物成分は多く発表されていますが、実際にヒトに投与して血小板凝集能の抑制が確認されたものとしてニンニクと赤ワインが挙げられます。 ニンニク中に含まれるアリルプロピルジスルフィド, ジアリルジスルフィドおよび他の硫黄化合物が血小板の凝集抑制に関与しており、これらがリポキシゲナーゼやシクロオキシゲナーゼの活性を変化させてトロンボキサン‐B2の合成を抑制すると考えられています。 赤ワインに含まれるポリフェノールの一種のレスベラトールは血小板凝集能の抑制に作用することがin vitroで示されました。また、最近ではタマネギに含まれるケルセチンやトマト抽出物にも血小板凝集抑制効果が存在すると報告されています。

 血液線溶系の活性化を促進するプラスミノゲンアクチベータ(PA)活性はそのインヒビターであるPAインヒビター(PAI-1)によって制御されています。果物、野菜および根菜類を豊富に摂取したヒトのPAI-1活性は、摂取量の低いヒトのPAI-1活性に比べて低いことが報告されました。すなわち、果物、野菜および根菜類などのようにPAI-1活性を抑制するような食物成分は線溶系活性を亢進し、血栓性疾患の発症を抑制すると考えられます。

 今後は、このような食物を摂取したヒトを長期間観察し、血栓性疾患の発症頻度を追跡することが望まれます。