食品栄養学科Department of Food Science and Nutrition
医療チームの一員として力を発揮する、食と健康のプロフェッショナルに。
現在食生活考
健康講座3
農学部 食品栄養学科(管理栄養士養成課程)
講 師 郡 俊之
食べ物の硬さとウエストの関係
平成17年国民健康・栄養調査によると40歳代~60歳代の男性の30%以上が肥満に分類されました。これは、20年前と比較すると約1.5倍に増加しています。肥満度を表す指標としてBMI〔体重kg÷(身長m)2〕が成人によく使用され、日本ではBMIが25以上で肥満とされます。肥満は糖尿病や心疾患など生活習慣病の要因になることが明らかにされ、最近ではメタボリックシンドロームという言葉をよく耳にするようになりました。これは肥満の中でも内臓に脂肪組織が過剰に蓄積することが必須で、さらに糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧のうち2つ以上を有する病態を指します。
肥満は、蓄積される脂肪組織の部位により内臓脂肪型と皮下脂肪型に分けられますが、内臓脂肪蓄積型肥満が生活習慣病発症のリスクを高めることが知られています。家庭でもできるこの判別法として、ウエスト周径(へその高さ)を測定する方法があります。ウエスト周径が男性85cm以上、女性90cm以上で内臓脂肪蓄積型肥満の危険性が高いとされます。
肥満を予防するためには、摂取エネルギーと消費エネルギーの収支バランスを保つことが大原則ですが、食欲をコントロールすることは難しいものです。最近、国立健康・栄養研究所および私たち栄養士養成施設が行った調査研究で、硬い食べ物を食べている人ほどウエストが細いという興味深い結果が得られました。この研究では、まず18~22歳の女子大学生454人を対象にして、過去1ヶ月間に食べたものを詳しく尋ねる食習慣質問票を用いて107食品の摂取量を推定しました。つぎに各食品を食べるときに使う咀嚼筋(そしゃくきん)の活動量を文献から引用して各食品の推定摂取量と掛け合わせて、個人の平均的な食べ物の硬さを決定しました。そして食べ物の硬さに応じて女子大学生を5グループに分類したところ、最も軟らかい食事をしているグループの平均ウエスト周径が74.9cmであったのに対して最も硬い食事のグループでは平均72.5cmとなり、食べ物が硬くなるにつれてウエストが細くなるという結果が得られました。
この研究結果は、女子大学生という条件のもとで得られた結果なので中年男性に当てはまるかどうかは今後検討する必要がありますが、動物実験でも餌の硬さと腹部の脂肪量に同様な関係が示唆されています。現代人の遺伝子は、硬いものを食べていた縄文時代とほとんど変化していないようですが、食べ物は農業と食品加工の発達で軟らかくなっています。普段から硬めの食事を選択するよう心がけたいものです。なお研究の詳細は、米国臨床栄養学雑誌※に掲載されております。
※Am J Clin Nutr 2007; 86: 206-213(Murakami K, Sasaki S, Takahashi Y, Uenishi K, Yamasaki M, Hayabuchi H, Goda T, Oka J, Baba K, Ohki K, Kohri T, Muramatsu K, and Furuki M)