食品栄養学科Department of Food Science and Nutrition
医療チームの一員として力を発揮する、食と健康のプロフェッショナルに。
現在食生活考
健康講座8
農学部 食品栄養学科(管理栄養士養成課程)
教授 渡辺 克美
食(FOOD)の役割と問題
「Food」という言葉を辞書で引くと、食物、食糧、栄養物などの訳が書かれている。現在の食には様々な問題があり、また、食は様々な役割を果たしている。人類の長い歴史のなかでは、人は飢えとの戦いに多くの時間を費やして来た。その結果、人類は倹約遺伝子を獲得し、余分な栄養素を体内に蓄え、飢えを凌ぐことができる能力を身につけている。しかし、前世紀の終わりの頃は飽食の時代とも言われ、食糧が満ち溢れ、生活習慣病などが大きな問題となった。そのため、食品のもつ第三次機能性が重要視され、特定保健用食品や栄養機能食品など数多くの保健機能食品が見られるようになり、その市場は今も拡大している。
しかし、その一方で21世紀になり、地球温暖化など環境の悪化による食糧生産の停滞や減少から来る食糧の量的な不足がクローズアップされるようになってきている。20世紀の科学の発展にはすばらしいものがあったと考えられる。急激に増加する人口に比例するかのように、農業の生産性が高まり、その増加する人口を支えてきたと言える。今後も世界人口は急速に増加して行くものと考えられている。だがしかし、地球は限られたものであり、食糧の生産が今までのように拡大して行くかには大きな疑問がもたれる。砂漠化や温暖化などに起因する農耕地の減少や劣化、そして作物の食用として以外の用途の拡大など、食を取り巻く環境は、その厳しさを増している。近い将来にも食糧不足が起こり、食品の第一次機能性(栄養性、生命を支えるエネルギー源)が重要視されるようになっても不思議ではない。そのような時代は過去にもあったからである。
食を取り巻く環境は時とともに変化し、食に対するニーズも変わる。雑穀類や擬穀類が健康に良い食品として注目されているのも生活習慣病や食物アレルギーなどが問題となったからである。現在は、第三次機能が重要である。しかし、それは第一次機能などが満たされているからである。食糧の生産・増産は今日明日のようにはいかない。農耕地の開発や整備、また作物品種の改良や開発には多くの時間を要する。言うまでもないが、作物の栽培にも時間がかかる。種をまき、収穫するには時が必要である。
このように、食にはさまざまな問題や役割がある。そして、それらの重みは時代とともに変遷する。だが、『食の問題の土台は第一次機能性にあり、さらに食が抱えるさまざまな問題を解決するには多くの時間が必要であること』を、食について考える時には常に忘れてはならない。